6月下旬

どっさり花材を仕入れ、本格的に製作を開始しました。
ブライダルシーズン真っ只中ということもあり、お客様のご注文を多数いただいておりましたので
その合間をぬってせっせと製作。
当日の I を想像してはニヤニヤ。
沢山のゲストから「きれい!」と絶賛されている情景を思い浮かべてはニヤニヤ。
新郎が嬉しそ〜に恥ずかしそ〜に I を見つめる場面を想定してはニヤニヤ。
ニヤニヤしながら花をあつらえる私はかなり怪しい人だったはず・・・。
一旦製作を始めると止まらなくなる性分なので、1週間程度で全アイテムが完成しました。
専用サイトを作り、 I にご披露。 I のお母さんも一緒に見てくれて、とっても喜んでくれて私もご満悦。

さあ!これが完成したお花たちです!

【入場:色内掛け】
この衣装に・・
和装用ボールブーケです。色内掛けと同じ色のバラを主体に、シャクヤク、ボタン、椿、ポンポンマム、
ハナミズキをふんだんにあしらいました。和の雰囲気を引き出すために水引の鶴、タッセルをつけました。

【お色直しその1:白ドレス】
この衣装に・・
ピンクを基調にしたアームブーケです。
花材はユリ3色、バラ、カスミ草、カラー3色、ベアグラス、羽毛。仕上げのリボンはドレスに馴染むアイボリー。
手元近くで華々しくユリが咲き、バラがそっと顔をのぞかせます。
そして花嫁が是非取り入れて欲しいと熱望したすっと伸びるカラー。
淡い色と締め色をバランス良く合わせて、甘く優しくスタイリッシュなブーケに仕上がりました。
ブートニアです。
新郎は筋肉質でがっちりした体型であるため、
ボリュームのあるタイプのブートニアにしました。
花嫁が白・色ドレスの時はアイボリーの
儀礼服(消防士なので)。
アイボリーに馴染みすぎる白っぽい色は避けました。
左から時計回りにアームブーケ、
リストレット、チョーカー、ブートニア。
そのあとにミニバラ1輪の
ミニコサージュを追加で10点製作しました。
バックコサージュ。
腰のやや高い位置につけます。
花材はユリ3色、カラー2色、カスミ草、
ベアグラス、羽毛です。
色ドレスではどちらかと言えば
スタンダードな形にしたので、個性的な
デザインにしました。
3輪のユリが集結し、カラーがクレッセントを
描きます。ドレスコサージュにユリやカラーは
珍しいので、花姿を活かすことを念頭に
置きました。個性的なデザインや色遊びが
できるのはシンプルな白ドレスならでは。
同じ様なピンクのグラデーションでミニバラの
コサージュも10点製作しました。
このバックコサージュからトレーンにかけて、
10輪のバラを流れるようにつけます。
頭のてっぺんからドレスの裾まで、余すところなく
魅せるのが狙いです。
サイドショットです。
チョーカーです。
ミニバラとカスミ草、バラの葉で構成。
手元はブーケのたっぷりの花で満たされるため、首元はワンポイント程度に。
リストレットです。バラ1輪のまわりに羽毛をあしらいました。
アームブーケは持ち方によっては手元が露出するので、こちらもワンポイント程度におさえました。


【お色直しその2:色ドレス】
この衣装に・・
とにかくクレッセントブーケが華やか!これでもかというほど花を入れました。
花材はバラ3色、トルコギキョウ、デルフィニューム、ラクスパー、ブルースター、ユーフォルビア、
アイビー、マスカット。
ブートニアです。
大輪のバラ、デルフィニューム、ブルースター、
アイビーを合わせました。
バラは儀礼服に同化しそうな色みなので、
青をたっぷり効かせてやんわりとトリミングしました。
左から時計回りで
ブーケ、
チョーカー、
リストレット、
ブートニアです。
バックコサージュです。
クレッセントブーケはインパクトのある
シルエット。それに対しコサージュは
遊びすぎずにシンプルなラウンドにしました。
リストレットです。
ボリュームタイプにしました。
ブーケが大きい場合、手元には
ワンポイント程度か、もしくは何も
つけないのがセオリーです。
でもよくよく考えれば、
ビッグボリュームのブーケで手元は
ほとんど隠れてしまいます。
だからブーケを持たないシーン
(両親への手紙を読む時など)が
サマになるよう、あえてボリューム
たっぷりにしました。
こちらはチョーカー。小花だけを並べて、主張しすぎないデザインにしました。

出来上がったお花たちに、ひとつひとつリボンをつけてラッピングしました。
どんなに小さなコサージュでも心を込めて包みました。
大きな段ボール2個にお花をそっとつめていき、「大活躍しなよ!」なんて「喝」を入れたりして。
これ以上わくわくしちゃう小包なんてないはず!
さあ、あとは郵便窓口に持っていくだけ。準備は万端!
連休前だったので次の週に発送することになりました。


7月

連休中の出来事でした。今までの人生の中で一番悲しい出来事が起こりました。
大切な親友Yが闘病の末、永遠の眠りについたのです。
箱根に小旅行をしていました。気付かない間に携帯電話に I からの着信が立て続けに5回。
メールも入っていました。そのメールでYのことを知りました。
すぐに帰る準備をして車を走らせました。その道中の記憶は途切れ途切れしかありません。
I の涙声の留守電を聞いたこと・・・実家に電話をして母に帰ると言ったこと・・・「泣いてもいいんだよ」夫が言った・・・。

あの日のYの手  とてもあったかかった・・・。

箱根から自宅までは渋滞に巻き込まれることもしばしば。3〜4時間かかることが多いのです。
しかし奇跡的に2時間で帰宅できました。たった2時間で帰れたなんて、Yがきっと導いてくれたに違いない・・・。
そう思わずにはいられませんでした。最終便にぎりぎり間に合いました。
飛行機が離陸。じっと座っているとだんだんYとお別れしにいくんだという実感がわいてきて、
冷たくなったYなんて会いたくないという逃避したい気持ちになりました。
人目もはばからず涙があふれて仕方がなかったです。
深夜12時、斎場に到着しました。
遠くにYの笑顔が見えました。シロツメクサで作った小さなリースをもって微笑むY。なんてきれいで可愛い写真。
Yはすぐそこにいるんだ  また会えるんだ  だけどもう何も語りかけてはくれないYがいるんだ・・・
深夜の弔問にもかかわらず、ご家族の方々があたたかく迎えてくれました。
あまりにも早過ぎる死にただただ泣き崩れるだけ。
今にも語りかけてくれそうな美しい寝顔にお別れをしました。

ずっと友達でいようね
I と3人 ずっと一緒だよ
I はもうすぐ結婚するよ  軽くなった体で  I の晴れ姿を見にきてよ
またいつか会おうよ  会いたいよ
ありがとう  ありがとうね
おやすみ Y



結婚披露宴まで3ヶ月を切りました。
ブーケ一式は無事 I の手元に届きました。お母さんと「可愛い!可愛い!!」と言いながら開封したそう。
その喜びの声が聞けて最高の気分。
I の衣装合わせも最終局面。お花たちを持って小物合わせに行ったそうです。
喜びいさんの電話。
I :「やいコラS(私の旧姓)!もう〜スタッフから大絶賛だったさ!
 他のお客さんからもすっごい注目されちゃったよ。」
私:「やい I !そんな話が聞けて嬉しいよ。
 試着の時にもブーケを合わせて楽しんで欲しかったんだよねー。
 まずはひとつめの目標は達成できたわ。」
I :「あんた、ショップにブーケ置いてもらえばいいんでないかい?絶対売れるって!」

へへ。こんなナリしてるけど一応職人肌よ。やるときゃやるのよ。

I :「色ドレスにはティアラとネックレスの光もの付けることになってさ、せっかく作ってくれた
 髪飾りとチョーカー使わないかもしれないんだわ。」
私:「いいのいいの。余る程プレゼントしたかったし、ドレスを試着した時に
  好みでコーディネートできるようにしたんだから。あとは好きに足したり引いたりすればいいしょ?」
I :「全部身に付けて写真撮ったさ。メールで送るかい?」
うう〜む。見たい!すごく見たい!!
しかし披露宴までのお楽しみにとっておくことにして写真は断りました。

さあ、これで花嫁の装いは完璧です。
あとはブーケプルズのセットを製作するのみ。
プルズセレモニーの時の衣装や会場装花との兼ね合いを踏まえて構想を練りました。
白ドレス×ピンク系の花あしらい、会場装花は黄色をさしたやわらかい色調・・・
→カラフルな方がいいかも。
参加者が「是非欲しい!」と思ってくれて、気軽にお部屋に飾れるブーケ・・・
→形はラウンドで工法はワイヤリング。カラフルな中にもお洒落で洗練されていて、
 花嫁のセンスの良さ、心遣いがこもったミニブーケに。
ブーケを引き当てられなかったゲストには「幸せのおすそ分けのお花」をプレゼント・・・
→最近ご好評いただいているコサージュタイプでいこう!
 セレモニーとしての華やぎとインパクトが欲しいので、できるだけ大輪の花を使う。
人数は一ヶ月前にならないと決定しない。しかも200人規模なのでかなり大人数になる可能性アリ・・・
→ミニブーケと「おすそ分けのお花」を入れる大きなバスケットが必要。
 プル(引く)するリボンの長さに十分配慮しなきゃ。

披露宴まで2ヶ月を切ったころ、参加人数は15名で決定しました。
自由参加の形式にするそうです。200人規模の披露宴なので年齢層が幅広く、独身者を
どう選出するかが微妙なことと、遠慮をする人も結構いるのではないか、ということで
その人数になりました。
全要素が固まったところで早速製作開始。
本当にお花をいじるのは楽しいです。大切な親友を亡くしたショックと悲しみを引きずる日々を
過ごしていましたが、お花に癒されていくような気がしました。
だけど手慣れた作業なんかしていると、自然に頭の中はYでいっぱい。
Yはきっと見に来てくれるはずなんだ・・・そんな時は無意識のうちに涙がにじみ、鼻をすする。
いやいや、こんなことではYに笑われる。
プルズセレモニーの情景を想像して、いつものように楽しくいこう。
ひと花ひと花、入魂していくようにミニブーケとおすそわけのお花、バスケットを作っていきました。
こうして生まれたのがこのお花たちです。

「当たり」のミニブーケです。
会場は200名収容ですから大きいはず。遠くからでも目立つように、カラフルにしました。
花嫁のブーケと会場装花の色を少しずつ拾っているのがポイント。
もらって嬉しい、お部屋に飾りたくなるミニブーケに仕上げました。
淡くまとめるかどうかでかなり悩んだリボン。
お洒落でセンス良くまとめるために深みのあるボルドーのオーガンジーリボンにしました。
締まりも出て良い感じ!
ミニブーケとおすそ分けのお花を入れるためのバスケットです。
フィンランドウォッシュのバスケットに、可愛いピンクのリボンでおめかししました。
仕上げは1輪のミニバラ。プルズしたあとは花嫁の手元にこれだけが残るので、
あとあとインテリアに使ってもらえるといいなぁ・・・なんて思いを込めて。
ミニブーケをセットするとこんな感じに。

ミニブーケを引き当てられなかったゲスト全員に贈る「幸せのおすそわけ」。
同じ種のバラを色とりどり用意。 当たりでもはずれでも嬉しい、花嫁からの贈り物。
コサージュとして使えるよう、裏にはピンをつけています。
コサージュタイプならば、すぐにその場でドレスやストールにつけてもらえるし、
何かと話題になること請け合い。披露宴がずっと皆様の心に残るようにと願いも込めて。
一点ずつプル(引く)用のリボンを取り付けてセレモニーに臨みます。
ピンクのバラは花嫁用アームブーケやアクセサリーにも使っています。
花嫁とお揃いだってことにゲストが気付いてくれるといいなぁ〜。
はずれても贈り物があるプルズセレモニーだという内容はふせて行うことになりました。
ブーケが当たらなければリボンだけ手元に残っておしまい、という定番ではなく
参加者をびっくりさせたいからです。
時間さえ許せば女性だけではなく、独身男性が主役になれる「ブートニアトス」だとか
「ブートニアプルズ」なんていうのもやってみたかった!

お花たちをひとつひとつラッピングして、私から I への最後の贈り物は旅立っていきました。
あとは当日を待つだけ。すごく楽しみ!

なんと友人代表の挨拶を任されることになりました。そういう役目は結構好きなんで即OKしました。
本当はその役目はYがやるはずでした。私はお花を担当しましたし、Yの結婚披露宴では
Iが友人代表挨拶をした経緯もあり、Yに引き受けてもらうはずでした。
Yだったら I にどんな言葉を贈ったのだろう?
Yが言いたかったことを私が言いたい。
札幌へ出発するぎりぎりまで、原稿とにらめっこする日が続きました。


11月の札幌は雪がちらつき、厳しい冬がすぐそこまでやってきていました。
兄の結婚式には参列したことがあったけれど、規模の大きい披露宴は初体験。
知り合いの多いアットホームな兄の式とは違い、受け付けにはずらっと係の人がいて
それだけで圧倒されてしまいました。
私:「こ・こんばんは・・・」
受け付け:「??」(名を名乗れ)
私:「名前は上野麻希子と申します」
受け付け:「・・わかりました。」
そんなに不思議なものを見るような目をしないでおくんなさい。
ただでさえ緊張で挙動不審なんだから。
・・・さあ、パーティの始まりです!

Enter



お問い合わせは【こちら